現代の消費者市場は、個々のニーズが多様化し、それに応じた製品やサービスの供給が求められています。このような状況の中で、ユニクロは独自のマーケティング戦略を展開し、ファッション業界において確固たる地位を築いています。
従来のマーケティング手法とは一線を画すユニクロのアプローチは、顧客の具体的なニーズに注目し、その要望に応えることを最優先としています。特に、ユニクロが採用する「SPA」システムによる一貫生産は、この戦略の核となっており、市場の細分化(セグメンテーション)、ターゲット層の抽出(ターゲティング)、そして市場での自社の立ち位置づけ(ポジショニング)を、従来の方法とは異なる形で実施しています。
そこで本記事では、ユニクロがいかにしてその独自性を市場に打ち出し、消費者からの信頼と支持を得ているのかを、STP戦略の観点から解説します。
STPとは
STP分析は、マーケティング戦略を策定する上で重要な手法であり、フィリップ・コトラー氏によって提唱されました。この分析は市場を理解し、効果的なマーケティングプランを立てるために役立ちます。
STP | 解説 |
---|---|
S | 市場や顧客群を、地理的、人口統計的、心理的、行動的な要因に基づき細分化します。同じニーズを持つ顧客グループに分けることが目的です。 |
T | 細分化されたグループの中から、自社の製品やサービスに最適な市場を選択します。 |
P | 選択した市場内で、自社製品の競合他社との差別化を図り、どのように顧客にアピールするかを決定します。 |
Sは、Segmentation(セグメンテーション)→市場細分化
Tは、Targeting(ターゲティング)→ターゲット市場の選定
Pは、Positioning(ポジショニング)→市場での立ち位置の決定
それぞれ上記の略称となります。
STP分析の目的
STP分析の主な目的は、変化する市場環境の中で、自社が持つ製品やサービスの強みを活かし、効果的にターゲット顧客にアプローチするための最適なポジションを見つけることです。
これにより、自社のマーケティング戦略を常に更新し、競争優位性を維持することができます。
「ユニクロ」のSTP事例
ユニクロのSTP分析アプローチは、従来の市場細分化の枠を超えて、顧客の実際のニーズに基づく独自の戦略を展開しています。このアプローチにより、ユニクロはファッション業界において一際目立つ存在となっています。
ユニクロのセグメンテーション
ユニクロでは、人口統計に基づく一般的な市場細分化ではなく、顧客の具体的なニーズを深堀りして細分化を行っています。「長持ちする服が欲しい」「日常着として安価に着られる服が欲しい」といったニーズに注目し、製品の企画から販売までを一貫して自社で行うSPA(製造小売)システムを活用しています。
これにより、柔軟な生産調整が可能となり、消費者のニーズに迅速に対応できるのです。
ユニクロのターゲティング
ユニクロのターゲティングは、属性に基づく細分化を行わず、直接消費者のニーズに応じた生産体制を敷くことで特徴づけられます。これは、SPAシステムによる生産調整の柔軟性が支えとなっています。
ユニクロがターゲットとするのは、流動的な顧客ニーズであり、「カジュアルかフォーマルか」「トレンドかベーシックか」といったニーズに基づいています。
ユニクロのポジショニング
ユニクロのポジショニングは、流行に左右されず、老若男女に受け入れられる普遍的なファッションアイテムを提供することにあります。ユニクロは、特定のセグメントに絞り込むのではなく、幅広い層に支持される「無難な普段着」を提供することで市場での独自の立ち位置を確立しています。
「ユニクロ」のSTP事例まとめ
ユニクロのマーケティング戦略は、従来の人口統計に基づくセグメンテーションではなく、消費者の具体的なニーズに焦点を当てた独自のアプローチにより、市場での独特な位置を築いています。
この戦略は、「SPA」システムを駆使して顧客の多様な要望に柔軟に対応し、商品企画から販売まで一貫して自社で手掛けることによって成り立っています。ユニクロは、流行を追うのではなく、普遍的で質の高いカジュアルウェアを提供することで、幅広い層の顧客にアピールしています。
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